ロエベ(LOEWE)の会場には、土を想起させる茶色いカーペットが敷かれ、巨大なカボチャのレプリカが点在している。これは、ロエベの常連コラボレーターでありアーティストのアンセア・ハミルトンによる作品。ロエベの職人によってレザーで作られたというソフトなフォルムは、なぜかシュールな雰囲気だ。

現実に存在するモノの在り方を疑ってみる。ショーが始まると、自分にも言い聞かせるかのように、こんな言葉が頭に浮かんだ。

ファーストルックは、ハードレザーで風になびくように成形されたミニドレス。足もとのボリューミーなショートブーツは、アイコンバッグ「フラメンコ」が合体しているようだ。その後も、おもちゃの車やパンプスが埋め込まれたドレスなど、目を疑うようなピースが続く。ショーノートに記されていた言葉を借りると、まさに「リアクションを呼ぶファッション」だった。

 
 
 
 
 

ロエベのバッグ「バルーン」の原型となった風船は、ジョナサン・アンダーソンのお気に入りのモチーフとなった。樹脂で立体的に作られた風船はトロンプルイユドレスの上にブラのように付けられている。さらに、ドレープに巻き込まれたり、ヒールとしてパンプスを支えたりして、押しつぶされて破裂寸前に見えるなど、シュールなタッチは細部にまで散りばめられた。

 
 
 
 
 

1924年に、詩人たちによる『シュルレアリスム宣言』をきっかけに、花開いたシュルレアリスム運動。それから約100年経った今、アンダーソンによってファッションに返り咲いたようだ。ドレスに立体的に浮かび上がる唇の輪郭は、サルバドール・ダリやルネ・マグリットを想起させ、モデルのジュリア・ノブス着用の女性の腕で抱擁されたドレスは、スキャパレリのアートピースのようだった。

一見、ナンセンスのように見えるが、だんだんその魅力に引き込まれていく。それは、アンダーソンがよく口にする「Tactile(触覚)」を刺激する素材選びへの真摯な姿勢と、緻密に計算されたバランスによるものだろう。

世の中に起きている現実を直視することはファッションの役割でもあるが、アンダーソンのように異なる視点から現実を見つめることも無くてはならないことだ、と思わずにはいられなかった。

arrow
arrow
    全站熱搜

    kidying.com 發表在 痞客邦 留言(0) 人氣()